コンセプトモデルは発売されると大幅にデザインが変わってしまうのはなぜ?

毎年のように開催されているモータショーでは続々と新型車が発表されていますが、なかには随分と大胆なデザインの車を目にすることがあります。

これはいわゆるコンセプトカーと呼ばれるもので、見たこともないような思い切ったデザインが施されていたりすることが多くなっています。

しかしながら実際の市販モデルになると、コンセプトモデルと比較して、随分と普通にまとまってしまってつまらないと感じることも多いような気がします。

コンセプトモデルの近未来的なデザインに、ワクワクさせられた分、やけに現実的なデザインになってしまうことが多いので、そのギャップに必要以上にガッカリしてしまうのかもしれません。

市販モデルで、コンセプトモデルの大胆さが失われてしまう原因はどこにあるのか。今回の記事ではそのことについて考えていきたいと思います。

 

自動車の形式認証制度

コンセプトモデル-2

自動車の車検証には認可された形式番号も記載されます

自動車メーカーが新型車を発売する際には、事前に監督省庁に新型車の申請を行って、保安基準に合致しているかどうかの審査を受けなくてはなりません。

この審査は「基準適合性審査」とよばれ、ブレーキ試験、排出ガス試験、灯火器試験などが行われ、通過したものにだけ形式指定が行われます。

この審査の基準となるのが「道路運送車両の保安基準」と呼ばれるもので、全部で73条もの決まりごとがあります。

なぜここまで細かい規定が定められているのかと言うと、車両の安全性と、環境性能を一定水準以上に保つ必要があるためです。

たとえば、車の外装に格好が良いからと、大きな突起のあるエンブレムなどを装備すると、万が一歩行者と接触したりした場合に、大変危険なわけで、法によって規制する必要があるのです。

上記は少し極端な例ですが、デザインを優先しすぎると、安全面で問題が出てくることはよくあることなのです。

モーターショーなどで発表するコンセプトモデルの場合、このような規制に捉われる必要がないため、デザイナーが自由に、存分に腕を振るってデザインするため、しばしば魂を揺さぶるようなデザインの車が誕生するわけです。

もし、コンセプトカーそのままの姿で形式審査を受けたとしても、規定に引っかかりまくって、まったくお話にならないということにもなってしまうのですね。

 

走行性能との兼ね合いもデザインに大きな影響が…

コンセプトモデル-3

発売前提のコンセプトモデルでは、かなり現実的なデザインとなってきます

車のデザインを考えるうえで、車の本質である走りを犠牲にするわけにはなかなか行きません。

とくに国産車メーカーは、乗り心地や快適性、燃費性能、静粛性へのこだわりが強く、なかなかデザイナーの意見が通りづらいという面があるのだと感じます。

コンセプトカーだと、結構外車もびっくりの奇抜なデザインもたくさん出てくるのですが、いざ市販となるとまるで羊のように大人しいデザインにまとまってしまうのは、そういうところもかなり影響しています。

 

デザインを優先してしまうと特に問題となってくるのが空気抵抗でしょう。環境性能が大きくクローズアップされる現在の風潮ですから、空気抵抗による燃費の悪化は見過ごせないポイントです。

少しでも空気抵抗を少なくして、燃費をコンマ単位でも良くしたいという考え方は比較的理解しやすいことかもしれません。

空気抵抗が極小化されるデザインというのは、だいたい決まっていますので、空気抵抗を削っていくと結局はどの車も似たような形に行きついてしまうというわけです。

エッジの効いたデザインの車がすっかり姿を消し、丸っこい車が増えたのにはそういう理由もあったわけですね。

コンセプトモデル-4

新幹線や飛行機も空気抵抗を極限まで少なくするための工夫があふれています

ちなみに車のボンネット下に開けられるグリルのデザインも、しばしばデザイナーと設計者の衝突が起こりやすい部分のようです。

エンジンの吸気と冷却を効率的に行うには、理想的な開口の位置と大きさと言うのが決まってくるわけですが、デザイナーとしては、ボディーに大きな穴が開いているのはエレガントに感じないものなのでしょう。

 

大量生産の効率化との兼ね合い

コンセプトモデル-5

コンセプトモデルでは既成の枠に捉われない大胆なデザインも可能に…

コンセプトモデルは、いわばワンオフモデルのようなもので、たった一つの車を形作ればOKなわけですから、あまり製造工程について考慮する必要はありません。

しかしながら、大量生産の現場では、ひとつの工程にかかる時間をコンマ単位で切り詰められないか、さらには、1銭単位でコストを削れないか必死で考えているわけです。

自動車メーカーは利益のことも考えなければ、いずれ倒産してしまうことにもなりかねませんから見過ごすことのできない問題です。

当然このあたりでも、デザイナーとの軋轢の大きな要因となってきてしまいます。

たとえば、デザイナーはヘッドライト周りを大胆に一体化したデザインにしたいと考えていたとしても、製造現場では、組み立てラインの大幅な見直しを迫られてしまう可能性があります。

最近の工場ではひとつのラインで多車種を生産することも多くなっていますので、ラインの変更を伴うようなデザインは、到底受け入れられないということにもなってきます。

つまり、自由な発想でデザインすればするほどに、どうしても生産段階でコストと手間が大きく膨らんでしまうというのは避けようもない事実でもあるのです。

 

国産メーカーのポリシーがデザインの邪魔をする

国産車メーカーは、安かろう悪かろうと世界から揶揄され、蔑まれた時代を、徹底的な改善によって、世界の信頼を勝ち取り、成功を収めてきた経験が根強く息づいています。

デザインよりも、性能の高い良い車を造れば売れるという思いが強いのは当然のことかもしれません。

車を買う側としても、車選びの選択基準に車の燃費などのスペックを重視する場合が多いような気もします。

もちろんデザインも重要なポイントでしょうが、スペックが満足できないようですと、購入対象から外れてしまう場合も多いので、スペックを妥協するのは非常に困難なことと言わざるを得ないでしょう。

そうなってくるとやはり妥協を迫られるのはデザイン側ということになり、どの車も似たりよったりのデザインに収斂されてしまうのは致し方のないところなのかもしれません。

 

日本人の気質の問題もあるかもしれない…

これは一般論に近くなってしまうかもしれませんが、やはり日本人は目立ち過ぎない無難なデザインを好むという気質も影響しているかもしれません。

ファッションでも、あまりど派手な装いをしている人は少数派で、さりげないオシャレにとどめるのが美徳というような雰囲気を感じます。

車選びにおいても、車の色は無難な白が選ばれることが多いのは、日本人の気質を端的に表しているのではないでしょうか。

自動車メーカーとしても、1割以下のとがった要望に応えるよりも、8割の人に何となくでも支持されるデザインを心掛けるほうが、販売面でも有利となるでしょう。

そう考えると、なかなかコンセプトモデルがそのまま発売されるというのは少々考えにくいことなのかもしれません。

 

コンセプトカーの目的によって、デザインの自由度は随分と異なる

コンセプトモデル-6

コンセプトモデルだと、トラクターもこんなに格好良くなってしまいます

コンセプトモデルには実はいろいろなレベルのものがあって、エンジンや駆動系も搭載してそのまま走り出せる完成度のものや、あくまでデザインのコンセプトを見せるだけのためのモックアップ(エンジンなどは積んでいない模型)であることもあります。

走行可能なほどに作り込まれたモデルの場合、案外と変更も少なくそのまま発売されることもありますが、モックアップはショー的要素で終わってしま事が多いですね。

個人的には、近未来的なモックアップに近いものを発売してくれたら、本当に面白いんだけれどもと期待してしまいます。

 

コンセプトモデルが、なかなかそのままの姿で市販されない理由を感じていただけましたでしょうか。

未来的なデザインがなかなか形となって表れてこないのには、様々な要因が重なり合って、やむを得ない事情もあるのだということがわかります。

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